世界中のピアノのレパートリーからショパンの曲がなくなったらとても味気のないことになるでしょう。
39歳の若さで結核のために亡くなったショパンはピアノの詩人と言われていますが、小品集もいいですが圧巻なのは二曲のピアノ協奏曲でしょう。
音楽関係者はオーケストレーションに難があると非難しますがピアノのためにオーケストラが尽くすものがあってもいいじゃないですか(笑)。別にいつもピアノとオーケストラが対等である必然性はありません。
そこでショパンのピアノ協奏曲の1番ですが名演奏あまたある中で私の一押しはショパンコンクールをわずか17歳で制したポーランド人クリスチャン・ツイメルマンです。
バックはオランダコンセルトヘボウ管弦楽団で指揮はソ連の亡命指揮者キリル・コンドラシンの実況録音盤。
繊細かつ優雅なショパン弾きのツイメルマンはその後に多くの指揮者で録音を入れなおしていますが聴き比べるとこの18歳の初々しい時の物が一番心を打ちます。
「名曲この一枚」などという雑誌には、弾き振りをしてドイツグラモフォンに入れたレコードがベストなどとありますが、これは全くの見当はずれでレコード会社から袖の下でも貰っているのかと毒づきたくなるほどの凡演です。
ベストはこのショパンコンクールを制した直後に入れた実況録音盤で決まりです。
ギレリスやブライロフスキー、アルゲリッチ、リヒテル、その他数百人に及ぶ録音がありますがショパンの青春の息吹を感じさせるものはこれただ一枚のみ。
手に触れればはらはらと溶けてゆく春の淡雪のようなピアノの音を聞けるのは唯一このツイメルマン盤なのです。
雑誌を信じてはいけません。