ずいぶん昔からオーディオ好きの方のお部屋にお邪魔してきましたが、聴く音楽も装置も部屋も百人いればそれぞれ皆異なりました。
一番驚いたのは半地下の40畳の部屋にグランドピアノを二台と、壁にはコローや藤田嗣二の名画が当たり前のように飾ってある方のお部屋でした。
こちらは昭和30年代にヨーロッパに留学されてその時に買い集めた外盤のレコードが5000枚ほどラックに収められており、マリア・カラスは海賊版を含め殆ど所有しておられると豪語しているお方でした。ラジオのFM放送でモーツアルトの詳しい解説をしていたこともあります。とんでもない桁外れのお金と教養の持ち主でした。そして家族を含めお人柄も最高。
たまたま私がオーディオ雑誌に載ったのをご覧になり人づてに家内とご招待をいただいたのですが、桁外れの豪華さにびっくりした覚えがあります。
その時にお部屋で鳴らされていた米国製のスピーカーを後に郡山の学会出張の際にのだや本店でこちらは社長がアメリカから持ってきたというものを見つけ、無理を言って譲っていただいた経緯があります。
凄いのを最初に見たのはのちの自身のオーディオライフに大きな影響があったということですね。
今もお付き合いさせていただいていますが、もう第一線の仕事からは引退され日本各地を自由に旅行されているようです。
一般にマニアの方でそれほど広い部屋で楽しまれている方は少なく、家族に遠慮しながらひっそりと鳴らすか、あるいはうるさいと文句を言われながら大音量で楽しんでいる方が大半です。
また、雑誌で見る評論家のお部屋やオーディオ店をまねた機器の飾りつけの方も多く、なんとなく落ち着かないお部屋が多かった気がします。
いずれにしても機械のメカが好きでやられている方の音は、どちらかと言うと無機質で潤いのない音が多く、音楽とくにレコードの名演奏を探すのに一生懸命な方のお部屋の音はふくよかでくつろげる音のようでした。
それから大事だなと思ったのはその方の教養と人格。
大変不遜な言い方で申し訳ないのですが、人柄の良い方の音は良く、そうでない方の音は聴いていて疲れるものが多かった。これは不思議でした。
音は人なりとは良く言ったものです。