小学生の頃、学校のスピ-カーから帰宅時に流れていたのはドヴォルザークの新世界交響曲の第二楽章だったのではないでしょうか。
英語の詞が付けられてComing Homeでも知られている第二楽章ですが、外国の曲なのに日本人の琴線に触れるとてもいい曲です。
ドヴォルザークが高額なオファーで新興国アメリカにわたったものの、おそらくは英語もろくにできない環境でホームシックに罹り、祖国を思い望郷の念に駆られて作った曲とも言われています。
死んだオーディオマニアの五味康佑などは通俗名曲と馬鹿にしていますがなかなかそうでもありません。
チェコの名指揮者ヴァーツラフ・ノイマンが共産化でも祖国を見捨てずに指揮者を続け、のちにソ連の影響から逃れることができた民主国家チェコスロバキアで録音されたスプラフォン盤にはドヴォルザークの望郷の念が極めて色濃く表れています。これぞお国訛り。
他国に蹂躙された経験が戦後のわずかの期間しかなかった我が国日本。
ノイマンが亡くなる前年に東京芸術劇場でやっと聞けた本物のノイマン指揮チェコフィルハーモニーは、レコードの数倍も望郷の念が聴いて取れました。シカゴのアメリカインプラント学会で風邪をひいて帰ってきて肺炎になり生死をさまよった後の演奏会だったので余計に心にしみたのでしょう。
ともかくドヴォルザークと言うよりはチェコ人の祖国を思う強い思いがヨーロッパから遠く離れた日本人の私にもはっきりとわかったのは強烈な体験でした。
数多く聴いたコンサートの、いまでも一番の演奏でした。