臨床にインプラント治療を取り入れてから40年近くたちますが、当初は際物扱いされていたものが今では息子たちの出た大学のカリキュラムにも入って立派に市民権を得ています。
なによりも良いのは、従来のブリッジや入れ歯で何の疑いもなくバンバン健康な歯を治療のためと称して削っていたのがなくなり、最後まで自分の歯を残せる希望が出たことにあります。
一方で当初歯科医師会には、インプラントのパイオニアと称する者の惨憺たる症例が報告されその解決に小生も関わったことがあるのもまた事実でした。
ありていに言ってめちゃくちゃな治療で、ひどい時は患者の家に押しかけて悪口雑言を吐いて来たそうですから開いた口がふさがりません。名門の名が泣こうというものです。
何代も歯科医師をやっているなんて何の免罪符にもならないのです。
そんな経過をたどり現在ではよくできたエビデンスの豊富な近代インプラントを(そうでもないものも残念ながらありますが)、症例を選び、適切な設計と手技で施術すればよい結果を患者さんに与えることが出来ています。
今は三十年を超える症例に遭遇することも多く、老健施設に頼まれてお邪魔することもありますが、ブローネマルクインプラントシステムの初期のものはやはり素晴らしく立派に機能しています。
誰でも死ぬときに枕元に入れ歯を置いて死ぬべきではないとは近代インプラントの創始者であったスウェーデンのブローネマルク先生の言葉ですが、それを実感する毎日です。