昨晩今世紀最大の女流ピアニストとして名を知られているアルゼンチン出身のマルタ・アルゲリッチの半生をドキュメンタリーフィルムに収めた映画をアマゾンプライムで観ました。
みんながすごい、天才だというので若い時からいろいろレコードも聴いてみましたがちっともいいと思えない。
ピアノがやたらに硬質な響きで演奏にしなやかさが感じられず、人間的な温かみが伝わらないのです。だから演奏できないクラシック音痴はしょうがないなとずっと自虐的に思っていたものです。
でもその秘密が夕べやっとわかりました。
幼少時から世界中を演奏旅行したり有名ピアニストについて技術の研鑽を計ったりでいわば根無し草のような浮き草人生を送ってきた人でした。
だからいつも自分の演奏に満足できず後悔ばかりしていたとか。自分は女でも男でもなくその両方を持っていると。まあびっくりです。
三度の結婚でもうまくいかず、それでも三人の娘を育て上げたのは立派です。
ドキュメンタリーのカメラを回していたのは二番目のシャルル・デュトワさんとの間に出来た子供でした。
幼少時から世界を演奏旅行させられていたのはかのアマデウス・モーツアルトと同じ。
娘は母のピアノの下で女性にしては大きな母の足の指を毎日飽きもせずに見ていたそうです。
アルゲリッチのレコードで一番売れたのはラベルの「夜のガスパール」ですが、完成して送られてきたレコードを聴いて彼女はあまりにひどい演奏に絶望的になったのだとか。わからないものですね。
発売当時激賞していた評論家の顔を見たいと心底思いました。
クラシックを含め、演奏家の心情をレコードから推し量ることはできないと確信した一瞬でした。